先日のこと
「体が痛くてだるい。糸績みしてすごしたい。昨日買 ったお茶出して」
息子にそういわれて、
手を額に当てると熱っぽい。
体温計で測ると36.7℃。
平熱。
高くも低くもない。
これは成長に伴う熱か、
風邪やなんかをひきはじめていて、
悪化すると、
これから高熱だすよ~のサインだ。
昨晩寄ったアジア中東食材のお店で、
スリランカのアーユルヴェーダの薬草を買っていたので、
これはナイスタイミング。
試してみよう。
煎じている間、
家にこもる気満々の息子、
私の打った麻を手渡す。
打った麻とは、
精麻の状態を
糸績みに適した状態にしたもの。
実は、
美しい糸を作るキモ。
熟練した確実な技術がいるため、
私が練習したものを試作や自分用に使います。
(生徒さんには師匠の打った麻のみ使っています^^)
「糸績み、どうやるんだっけ。なんとなく覚えてるんだけど」
半年ぶりなので忘れたらしい。
ゆっくりと説明しながら、
やって見せる。
「あ~なんか思い出した!」
何回か績んだ後、
もう一度私の手で、
コツを解説しながらやって見せる。
糸から作って着物に仕立てるのに、
多くの工程と時間を必要とします。
だけど、
強くしなやかな糸で作られた布は、
長く日常で使えます。
わたしの野良着も、
江戸時代のものと言われていて、
野良仕事に使われたであろう、
経年劣化の後があります。
それでも今も現役で使えます。
きっと、この野良着は私が死んでも、
ずっと現役でしょう。
しかし、
糸績みの手わざは、
一度途絶えると再現が難しいものです。
遠くない将来、
科学技術が進み、
その手わざを機械で再現できるかもしれません。
しかし、
この布の皮膚感覚、
糸績みの工程、
人の手から人の手に移される技術、
そのかかわりの中にあるものは、
人の手によってなされるものです。
手から手へつなぐもの、
この手の中の暖かさは、
たぶん人から人へつなぐもの。
時間はかかるけど、
共有する時間は、
永遠に忘れたくない心地よさ。
宇宙空間のように、
ずっと広がってくような時間。
麻のある時間が、
身体と心を整える。
力を入れずにぼ~っとしながらの数時間で、
績んだ麻は、
小さいへそ玉になりました。
ママの分も並べて親子へそ玉。
彼の手の中にある、
へそ玉はとても暖かい。
この暖かさ、
目に見えない光のようなもの…
この暖かな光を次世代に、
みんなでご一緒につないでゆきしましょう。
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